mirage of story






迷いは時に人を殺す。

駄目だ。戦いにおいては迷いのある方に、勝ちは舞い降りない。
だから、シエラにはどうしても分かってもらわなければ。






「でも―――カイムのお父さんに剣を向けるなんて、そんなこと」




「親子だろうと関係ない。
たとえ誰であろうと、俺達の前に立ちはだかってシエラを傷付けるというのなら、敵以外の何者でもない。

それに、親子の縁ならとっくに切れてる。
ただ俺はあの人に会って.......何故俺と母さんを捨てて出ていったのか、その理由が父さんの口から聞きたいだけだから」



「だけど......」




「まぁ、俺が言っておきたいのはそれだけ。

......何か気分が暗くなっちゃったな。ごめん。
気分転換に、何か飲み物でも頼もうか」





シエラの言葉を少し強引に遮りそう言うカイムは、フッと軽く笑って彼女を見て片手を挙げヒラリと振った。



一方、途中で言葉を遮られそれ以上言葉が出てこなくなってしまったシエラ。

そんな彼女を傍らに、挙げられたカイムの手に気が付いた店の人が二人の元へとやってくる。






「何かおすすめの飲み物、二つお願いします」



やってきた店員にカイムはそう言い、その注文を店員がテーブルの上に置いてあった伝票に書き加える。

書き加えた伝票を元の位置に戻した店員は、軽く会釈をして身を翻してまた去っていった。






 
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