mirage of story
「多分、あの店を出て少し経ってからくらいだと思う。少なくとも、俺が気配に気が付いたのは。
でももしかしたら、それよりも前からかもしれない。
目的はどうであれ、俺達に何か用があるらしい。
さて.....その用が俺達にとって良いもの、悪いものか。それを見極めないとな」
カイムは横目で後ろの気配の先を伺う。
このまま歩いていくだけでは、埒が明かない。
それにこの街道も無限に続くわけてはないし、いづれは行き止まりにぶつかる。
そうすれば恐らく、相手は何らかを仕掛けて来るはず。
感じる気配の限り、ただ自分達を観察しているだけの様子で殺気のようなものはないが、相手の目的が分からない以上は安心は出来ない。
このまま、相手が行動を仕掛けてくるのを待つか。
それとも。
「いい、シエラ?
このまま歩いてばかりで様子を伺うばかりじゃ、埒が明かない。
.......あの街灯が見える?」
「街灯?」
そう言われ、道の進行方向の先を見ると一本のクラシックな街灯が見えた。
カイムが言っているのは、多分あのことだろうとシエラは小さく頷く。
「あの街灯の端に路地みたいな横道があるだろう?
あの街灯まで行ったら、走ってあの路地に入る。
相手は俺達がつけられてるってことに気付いてないと思っているはずだから、急に姿を消したら焦ってあの路地まで追い掛けてくるはずだ。
それを、俺達は待ち構えて捕まえる。
シエラ、それでいい?」