mirage of story







深紅の瞳は真っ直ぐ、続く街道の向こうを見つめたまま。
歩みも止めないで、そのまま歩き続ける。



傍から見れば、何も変わったことはない。

シエラが頭の中で色々と考えているその間に何があったのか分からない。
だが、明らかに先程とは違う空気をシエラはカイムから感じていた。


だからカイムに言われるまま、真っ直ぐ前を見つめたまま耳を傾けた。









「誰かに後をつけられてる。

多分、人数は一人。
姿は見えない。気配を消してるようだけど、微かに感じる」



「っ!」



「シッ!声を上げちゃ駄目だ。

相手に俺達が気が付いてるってことを知られちゃいけない。
気付かれてるって分かったら、相手が何をしてくるか分からない。タイミングを見計らって何処かに逃げ込むか、相手が何者かを確かめないと」




思わず声を上げそうになるシエラに、カイムの声が制す。

トーンは先程と変わらず声も荒げていないが、その制止の声にシエラは声を押さえ込んだ。
二人は何事もないように、変わらぬ歩幅で歩いたまま普通の会話のように話を続ける。








「私.....全然、気が付かなかった。

一体どのあたりから?
それに、どうして後なんかを」






 
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