mirage of story
"そのままでは声も出せぬか"
何も言うことが出来ずただ茫然と見つめる私に、水竜はフッと笑うような吐息を零して言う。
確かに今のこの体勢では声は出しにくいが、この状況の衝撃で声を出すことを忘れていたというのが正しかった。
"これなら、よいだろう"
ブワッ。
と水竜の声が聞こえたかと思うと、突然私の身体が浮く。
吊り上げられているような感じではなくて、何かに包み込まれ空間ごと宙に浮き上がるような感じ。
「きゃ....っ!」
もちろん、こんな感覚は初めてで私は声を上げる。
手に掴んだ指輪も危うく離しそうになったが、それはどうにか堪えた。
私は浮く身体を何とか立て直して、正面を向き直す。
私と水竜。
両者は向き合う形となって静止した。
"...............ようやくこの時が来た。
お主とこうして向き合い、再び言葉を交わすこの時が。
我はこの五年。
この時が来るのを、どれほどまでに望んだことか"
感極まった水竜の言葉。
一体何を言っているのだろうか。水竜は。
私は今この時、初めて水竜と出逢ったはずなのに。
なのに何故、水竜はそんなことを言うのだろう。
どうして、こんなにも懐かしむように私を見るのだろう。
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