mirage of story
「どうして、どうして貴方が俺の父のことを――――」
父。その言葉が水竜から零れる。
カイムはそれに、思わず声を上げる。
"我はこの世界の全てを見てきた。指輪の中から、幾千の時を見てきた。
世界の中で起こったほんの些細なことでさえ、我は知っている。
君の父親のことも、君のことも。彼女のことも。それ以外のこの世界に生きる者達のことも。
その者自身が知り得ぬことも我は知っている。
普通であるならその者自身それを知ることなく一生を終える。
だが........君は知らねばならない。知る義務が君にはあるのだ、少年よ"
「義務――――」
義務。
その言葉が、カイムの耳にいやに重く聞こえた。
他の者にはない、自分だけに在る義務。
そんなもの背負ったつもりはないけれど、いつの間にか背負わされていたのか。
カイムは何か実感のようなものを感じ、唐突に突き付けられたその義務に心の何処か奥で覚悟を決める。
どうして自分だけに。
どうして、他の特別な人ではなくて自分に。
そんな疑問が先走って頭の中を過ぎるが、重い意味を持つ水竜の言葉に疑問は押し留めた。
"全てを知ったとして、決断をするのは君。
そして何か行動を起こすのも君次第だ。
ただ我は、君に我の記憶の一部を伝えるだけ。
決断を強いたりはしない。
だが決して自分を見失わないことだ。
何があっても、自分を貫けばいい"
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