mirage of story
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なかなか戻ってこないシエラを捜しにやってきた、森の中の泉。

そこに在ったのは、美しい蒼を纏った水竜。







綺麗な瞳で俺を見つめる水竜は、俺に知らねばならないことがあると言う。
それを知ることが、俺の義務であると。





正直、初めは意味が分からなかった。

何を言っているのか。
そもそも、伝説上や歴史上でしかその存在が確かでない竜が、何故俺の前に居るのかも。



色んなことが唐突すぎて、俺の頭では整理仕切れなかった。













だけど言葉を重ねるその水竜に、不思議なことに俺は義務を受け入れていた。

水竜の醸す雰囲気に飲まれ、受け入れてしまったというのもある。
だがそれより遥か強く、心の奥に受け入れなければならないという使命感があった。
















"........しかと、その目で見るのだ。少年よ"



そんな水竜の声が聞こえ、周りから一瞬にして今まで見えていた風景が消えた。

森の木々の緑。
泉の透明且つ澄んだ青。
全てが一瞬で消えて、何にもない白い世界に俺は居る。





気が付くと、目の前に居たはずの水竜の姿もない。

たった一人で、白い世界に俺は居た。










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