mirage of story
"認めたくない事実、それと向き合い受け入れるというのは実に勇気の要ること。
君は強い少年だ。
我が思っていたよりも、もっとずっと強い心を持った少年だ"
「そんなこと、ありません。
俺はこのことを知った所で何をやったらいいのかも分かりません。
何かを起こすような勇気もありません。
心の何処かではまだ何かの間違いであって欲しいと思っています。
この事実が俺の大切なものを奪っていくような気がして、凄く怖いです。
.........俺は強くなんかない。ただの弱者です」
"そうやって思い考えることが出来るのも、また君の強さの証だ。
恥じることはない。
誇ればいい、その強さを。
...............君が強い心を持った者で、本当によかった。
君がもしも弱い心の持ち主であったなら、全ては愚かこの事実を君に伝えることさえ我は躊躇ったかもしれない。
――――君になら、全てを伝えても安心だ"
フッと笑い言う水竜の声が優しくて、俺は凄く心が慰められた気がした。
だが、その言葉にはどうしても引っ掛かるものがあって、俺はうっすらと不安を募らせる。
全てを伝えても安心だ。
.......全て?
全てを伝えても安心だ、ということはまだ俺に伝えられた事実は全てではないということなのか?
その事実はもう、充分すぎるくらいの衝撃を俺に与えたというのに。
まだ、何かあるというのか?
"..........いいか、少年。
残念ながらまだ君は、事の本質を知ったわけではないのだ。
君が今知った事実は、ほんの表面に過ぎん。
核心はまだ君の知らない所に埋まったままだ。
............そして君にはまた、それを受け止めて向き合ってもらわねばならない"
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