mirage of story
 
 



 
彼女は誰かが助けを求めれば、誰でも関わらずに手を差し伸べるような優しい子。


彼女は皆を慕い、皆は彼女を慕う。
そしてライルとは、何でもない他愛ない話で笑い合った。


そんな平凡で普通で、どこにでもあるような平和な毎日だった。
幸せな毎日だった。

それがずっと続く。
この時、誰もが思っていた。








―――。

だがそんな平和な毎日の中で訪れる転機。

それは丁度彼等二人がこの世界に生を受けてから十二の年が巡った日。
この日は姫である彼女の誕生日の祝宴。

事はその後。
その祝宴を終えた後にライルはルシアスと共に王である彼女の父の元に呼ばれたのである。



王の元へとやってきた幼い二人。
待っていたのは、真剣な面持ちで何かを握り締め座る王の姿。

雰囲気に飲まれて黙りこむ二人を前に王は握り締めていた手を開き、穏やかに笑う。







その手の中には、淡く輝く一つの小さな指輪があった。
 
 






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