mirage of story
「あ.....はい。
でも先に休んでて下さい。
俺、もう少し此処に居ます」
「ん、そうか。
まぁ、程々に寝ろ?もし明日の朝、寝坊したら置いてくぞ?
んじゃ、おやすみ」
「はい。
―――おやすみなさい」
手をひらひらと振り、ジェイドはテントの中へと入っていった。
ロキはその様子を軽く目で追い掛けた後、木へと凭れかけていた身体を持ち上げて何も言わないままジェイドの後にテントの中へと消えていく。
ジェイドとロキが居なくなって、カイムは一人になる。
空間が少し広くなったように感じて、少しだけ空気が冷めた気がした。
パチパチ.....パチッ。
聞こえるのは、弾ける焚き火の音だけになる。
「ふぅ......」
そんな中、カイムが零した溜め息が夜の冷気に白い靄となり宙を漂う。
カイムは夜の寒さも忘れ、その白い息をぼんやりと見つめて静寂になった空間の中で暫しの間、これからのことを考えようと目を閉じる。
でもいくら考えても頭の中を巡るのは、どうしようもない漠然とした不安ばかり。
求めるはっきりとした答えは出てこない。
頭が痛くなる。
そう思いカイムが閉じた瞳を開けると、どうしたことだろう。
夜一色だったはずの空がもう明るくなり始めていた。
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