mirage of story










自分の中では、ほんの五分くらいしか経っていない気がしていたのに。










「いつの間に......」




どうやら一晩中、考えていたらしい。
まぁ一晩中考えたところで、結局何も答えは出やしなかったが。




驚きながらカイムが目の前に意識を移すと、ついさっきまで激しく燃えていたと思っていた焚き火が燃え尽き炭になっていた。
それを見た瞬間、ハッと気が付いたように冷え切った身体の感覚に襲われて、カイムは端に置いてあった毛布を手で手繰り寄せた。














「寒い―――」


毛布を頭から被り、身体を温めようとモゾモゾと動く。
摩擦でじんわりと身体に温かさが伝わって、同時に眠気が襲ってきた。







もうすぐ夜が明ける。
夜が明ければ新しい朝がそこにはあって、またジェイドとロキとそれからシエラとの一日が始まる。






此処を発つのは朝早くだと言っていたから、もう時間はないだろう。
だがどうしても襲い来る眠気に耐えられなくなって、カイムは少しだけ眠ることにした。



毛布に包まれて堕ちていく意識に、自分が今思い悩んでいることが本当は夢であればなんてことを心の何処かで思う。
だがそんなことはあるはずはないと心で失笑し、カイムはそのまま静寂に身を任せた。









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