mirage of story
周りの兵達は、そんなライルを唖然と見つめた。
まだ若い彼の青い瞳に、計り知れない程の強さと哀しみの色を見て。
その後ろ姿には、戦と常に隣り合わせであるはずの死への恐怖は一切見えなかった。
「死ぬ気か........隊長。
まだ、あんなに若いってのに」
復讐と目的のために突き進むライルの姿には、生への未練は無かった。
それを肌に感じる兵士達は、どんどん小さくなっていくその後ろ姿をただ見て呟く。
あの勇気。あの決意。
自分達より年下の姿とは到底思えない。
ましてや遥かに下、まだ子供とも言える十八歳の少年とは.....。
「..........」
兵士達はそんな誰が発したかも分からない呟きに、皆同じことを感じ黙りこくった。
脳に焼き付くライルの青、蒼。
腕が良いからと言って上に立つ若造に、苛立ちを感じることもあった。
だがそれは所詮僻みで、自分勝手なことであったことを今思い知る。
あのライルという少年は、自分達なんかよりもずっと強い人なのだと。
戦いの強さとかそんなものじゃなくて、心も全てが自分達と比べ物にならないくらい強かったのだと。
「俺達も死ぬ気で戦うぞ。
あんな若造の隊長なんかに、いいとこ全部持ってかれて堪るか。
........魔族のため、王のためルシアス姫様のため、そして隊長のために―――行くぞ!」
........ウオォォッ!
発起した誰かの叫び。
その叫びに共鳴するように、周りに居た兵士達が各々に雄叫びを上げた。
その雄叫びが重なり、地を揺るがす。
士気が、一気に高まった。
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