mirage of story









ザアァァ―――。
大地に吹き抜ける風が、その雄叫びをその身に乗せて運ぶ。

高まる士気は連鎖し、大地を駆け巡るように散らばる兵士達に伝わる。























ウオォォッ―――!







カッ。
ヒヒーンッ......。


「......何だ、これは」




風に乗り駆け巡る兵士達の士気は、戦闘の最前線へと急ぎ駆けるライルにも伝わった。

馬を止め、周りを見回す。
見た目は何も変わらない。だけれど何か戦場全体を取り巻いている空気が、変わった気がした。






何が起きたのかは、分からなかった。

だがその空気からは強い何かを感じて、ライルは自然に自分が今走ってきた方を軽く振り返りフッと微笑んだ。












「行くぞ!」



ヒヒーンッ。
それからすぐ、ライルはまた前を向き直り再び馬の手綱を引いた。

駆け巡る士気を纏い、大地には馬の蹄が駆け抜ける音。
進む先は、敵の懐。






勢いは増し、風と共に戦場を駆ける。

先程までは遠くに見えていたはずの敵味方入り乱れる目指す場所は、もう目の前だった。










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