あおいぽりばけつ
光る自販機を探し、ふらふらと歩いていると後ろから肩を叩かれた。殆ど知り合いなどいない人も疎らなこの校舎で肩を叩かれるなんて、良い相手では無いのではと心臓が数ミリほどズレてしまう。
ゆっくりと振り向いた。スムーズに振り向けなくて、ただ、ぎこちなく。
暗闇に佇むその姿を見て、一音零す。
「あ……」
振り向くとそこにはあまり顔を合わせたくない、和也がいた。
取り乱した姿を少しでも見せてしまった事が、やけに恥ずかしく思えて、目を真っ直ぐに見れなかった。黙り込む私などお構い無しに、あの夜の出来事はまるで無かったかのように、普段通りの和也が笑う。
「陸、まだ多分帰らんよ」
「……そう、ですか」
「うん、そう」と返しにくい返事をするから、てっきり帰るのかと思ったのに、和也は私の目を見て立ったまま。手持ち無沙汰で鞄から財布を取り出し辺りを見渡して私は和也に尋ねる。
「自販機、どこ」
その言葉に少し呆れたように、胡散臭い笑みを浮かべて、「こっち」と手を招く。先を進む和也の背中をぼんやりと眺めていると、思いがけない言葉が降り掛かる。
「花火大会、すまんかったのう。ワシ全然知らんかったんじゃ」
「いや、……和也さんが謝ることじゃないでしょ」
「いやぁ、陸が誘われとるって知っちょったらそっち行け言うたんに。……すまんのぅ、陸はあぁじゃけぇ、許してやってな」
バツが悪いと人は上手く話せなくなってしまうのだろう。折角歩み寄り謝ってくれているのに、とても居心地が悪い。ただそれだけしか頭に浮かばなかった。
「あの……あの、大会、……頑張ってください」
居心地の悪い中、漸く捻り出した言葉にまるで豆鉄砲を喰らった鳩のような顔を浮かべて和也が笑った。
「ワシらがインターハイに出れた、それだけで奇跡みたいなもんじゃからのう。高望みしたら足元すくわれるわ」
立ち止まった自販機の前。私よりも先に小銭を押し込み、スポーツドリンクのボタンを押した。
「それ、昨日の詫びじゃ。陸に伝えてくれや。明日も朝早いから自主練は程々にせえよって」
手を振り、去っていく背中。私は冷たいペットボトルを握りしめて、小さく「ありがとう」としか言えなかった。
ゆっくりと振り向いた。スムーズに振り向けなくて、ただ、ぎこちなく。
暗闇に佇むその姿を見て、一音零す。
「あ……」
振り向くとそこにはあまり顔を合わせたくない、和也がいた。
取り乱した姿を少しでも見せてしまった事が、やけに恥ずかしく思えて、目を真っ直ぐに見れなかった。黙り込む私などお構い無しに、あの夜の出来事はまるで無かったかのように、普段通りの和也が笑う。
「陸、まだ多分帰らんよ」
「……そう、ですか」
「うん、そう」と返しにくい返事をするから、てっきり帰るのかと思ったのに、和也は私の目を見て立ったまま。手持ち無沙汰で鞄から財布を取り出し辺りを見渡して私は和也に尋ねる。
「自販機、どこ」
その言葉に少し呆れたように、胡散臭い笑みを浮かべて、「こっち」と手を招く。先を進む和也の背中をぼんやりと眺めていると、思いがけない言葉が降り掛かる。
「花火大会、すまんかったのう。ワシ全然知らんかったんじゃ」
「いや、……和也さんが謝ることじゃないでしょ」
「いやぁ、陸が誘われとるって知っちょったらそっち行け言うたんに。……すまんのぅ、陸はあぁじゃけぇ、許してやってな」
バツが悪いと人は上手く話せなくなってしまうのだろう。折角歩み寄り謝ってくれているのに、とても居心地が悪い。ただそれだけしか頭に浮かばなかった。
「あの……あの、大会、……頑張ってください」
居心地の悪い中、漸く捻り出した言葉にまるで豆鉄砲を喰らった鳩のような顔を浮かべて和也が笑った。
「ワシらがインターハイに出れた、それだけで奇跡みたいなもんじゃからのう。高望みしたら足元すくわれるわ」
立ち止まった自販機の前。私よりも先に小銭を押し込み、スポーツドリンクのボタンを押した。
「それ、昨日の詫びじゃ。陸に伝えてくれや。明日も朝早いから自主練は程々にせえよって」
手を振り、去っていく背中。私は冷たいペットボトルを握りしめて、小さく「ありがとう」としか言えなかった。