あおいぽりばけつ
「伊織ちゃん今日暇しとる?」
高柳さんからの言葉はいつも疑問形だ。
それが何時しか心地好いと思うようになっていた。
答えに悩まずに、反射的に言葉を吐き出せる楽さに驚いた。
「はい、今日は予定ないんで暇です」
そっと同期の女の子が教えてくれた。
高柳さんを狙っている女子社員が私を疎ましい目で見ていると。
確かに、理不尽に怒られる事もあった。お茶汲み当番を押し付けられたり間違った書類を渡されミスもした。だけどそんな私を見かけると、すぐに高柳さんがフォローしてくれるから余計に女子社員が私を目の敵にしていく。
気にならないと言えば嘘になる。それでも味方が居ると思えば、気にしないでも良いのかもしれないと自分に言い聞かせた。
陸への思いを完全に断ち切った訳では無い。だけれども微かに感じる好意に流されてしまうのも、断ち切る種としては悪くは無いのかも知れない。
「ほんまか。ほいじゃ飯行こうや」
去年の今頃、切った髪はもう胸辺りまで伸びてきた。髪は意外と早く伸びるんだ、とあの頃の私に教えてやりたい気分だ。
髪を失い、後悔をする事も殆ど無いぞと安心させてやりたい。
代わり映えのしない毎日でも、僅かに変わる日々。心に染み付いた陸との思い出も滲み薄れていってしまえば良いのに、と願う私と忘れたくないと思う私が背中合わせでいる。せめぎ合う真反対の気持ちを抱えて私は生きている。いつかどちらかを選べると信じて。
恋は苦くて報われないものだと思っていた。
でも、そうじゃないのかもしれないと思い出す。
高柳さんからの言葉はいつも疑問形だ。
それが何時しか心地好いと思うようになっていた。
答えに悩まずに、反射的に言葉を吐き出せる楽さに驚いた。
「はい、今日は予定ないんで暇です」
そっと同期の女の子が教えてくれた。
高柳さんを狙っている女子社員が私を疎ましい目で見ていると。
確かに、理不尽に怒られる事もあった。お茶汲み当番を押し付けられたり間違った書類を渡されミスもした。だけどそんな私を見かけると、すぐに高柳さんがフォローしてくれるから余計に女子社員が私を目の敵にしていく。
気にならないと言えば嘘になる。それでも味方が居ると思えば、気にしないでも良いのかもしれないと自分に言い聞かせた。
陸への思いを完全に断ち切った訳では無い。だけれども微かに感じる好意に流されてしまうのも、断ち切る種としては悪くは無いのかも知れない。
「ほんまか。ほいじゃ飯行こうや」
去年の今頃、切った髪はもう胸辺りまで伸びてきた。髪は意外と早く伸びるんだ、とあの頃の私に教えてやりたい気分だ。
髪を失い、後悔をする事も殆ど無いぞと安心させてやりたい。
代わり映えのしない毎日でも、僅かに変わる日々。心に染み付いた陸との思い出も滲み薄れていってしまえば良いのに、と願う私と忘れたくないと思う私が背中合わせでいる。せめぎ合う真反対の気持ちを抱えて私は生きている。いつかどちらかを選べると信じて。
恋は苦くて報われないものだと思っていた。
でも、そうじゃないのかもしれないと思い出す。