あおいぽりばけつ
乱れ咲く会話の花。近況、進路、就職、恋、夢、不満、自慢。そのどれもが私の鼻柱を掠め過ぎて行く。
興味が無い訳では無い。ただ、見過ごして泣いてしまうのは嫌だった。泣いて、頭が痛くなるなんてもうごめんなのだ。
「伊織は彼氏出来たん?全然言わんやん、そういう話!折角再会したんやから教えてや」
絡まる細い腕。こちらを向けと言わんばかりに右耳が揺れる。急かされて浮いた話を思い浮かべても立ち話では語り尽くせない。
同級生が話し騒ぐ恋の話は至極簡単。好きで、告白して、振られた、付き合えた、別れた、嫌われた。たったそれだけ。
同じ分だけ生きてきたのにどうしてこうも違うのだろうか。私を取り囲む明るく弾ける笑に嫌な気持ちが溢れて仕方無い。
小さく息を逃して、自分の居場所を探そうと視線を上に放り投げる途中。人混みの向こう、ブラウンのスーツが揺れた。そして、一緒に青黒い髪も。
「陸」
一言叫ぼうとした。陸か分からなかった。でも、陸だと思った。胸がざわざわと騒ぎ出す。足が鉛のように重たくて、足袋の中で足が滑る。
早く駆け寄り、確かめたい。短く息を吸って呼ぼうとした。
しかし、それは黄色い声に掻き消される。
「やっと見つけたわ。伊織ちゃん」
「ちょっと!伊織〜!何ね、こんなイケメン捕まえちょったん?!ずる〜」
声の主は顔を見ずとも分かる。何度も聞いてきた甘く優しい声。
頭を振れば挿した簪が儚げな音を控え目に奏でた。
「違う、……そうじゃない」
「まだ、違うね」
振り返ると大きな花束を持ち、ネイビーのスーツを来た高柳さんが立っていた。眩しい笑顔、口から吐く白い息が輝いて見えた。
「イケメンのお迎え付きとか勝ち組やんか!!伊織〜おめでとう」
自分の意志とは違う方向に話が進んで行く事がこんなにも窮屈で悲しいなんて、初めて知った。
また、紛れた。人混みにブラウンが。
見失ってしまうと、心が焦り声が漏れ出た。
「陸……」
「伊織ちゃん……?おったん?三日月の人」
気を利かせてそそくさと去って行った旧友。取り残された私と高柳さん。
顔を覗き込まれて問われ、頷いた瞬間ぽろりと涙が零れた。
「そう、じゃあ行きぃよ。俺はずっとここで待っとるからね」
くるりと私の背中側に回り込んだ高柳さん。そっと背中を押されて耳元で囁かれた。
「とっても綺麗やから、行っといで」
興味が無い訳では無い。ただ、見過ごして泣いてしまうのは嫌だった。泣いて、頭が痛くなるなんてもうごめんなのだ。
「伊織は彼氏出来たん?全然言わんやん、そういう話!折角再会したんやから教えてや」
絡まる細い腕。こちらを向けと言わんばかりに右耳が揺れる。急かされて浮いた話を思い浮かべても立ち話では語り尽くせない。
同級生が話し騒ぐ恋の話は至極簡単。好きで、告白して、振られた、付き合えた、別れた、嫌われた。たったそれだけ。
同じ分だけ生きてきたのにどうしてこうも違うのだろうか。私を取り囲む明るく弾ける笑に嫌な気持ちが溢れて仕方無い。
小さく息を逃して、自分の居場所を探そうと視線を上に放り投げる途中。人混みの向こう、ブラウンのスーツが揺れた。そして、一緒に青黒い髪も。
「陸」
一言叫ぼうとした。陸か分からなかった。でも、陸だと思った。胸がざわざわと騒ぎ出す。足が鉛のように重たくて、足袋の中で足が滑る。
早く駆け寄り、確かめたい。短く息を吸って呼ぼうとした。
しかし、それは黄色い声に掻き消される。
「やっと見つけたわ。伊織ちゃん」
「ちょっと!伊織〜!何ね、こんなイケメン捕まえちょったん?!ずる〜」
声の主は顔を見ずとも分かる。何度も聞いてきた甘く優しい声。
頭を振れば挿した簪が儚げな音を控え目に奏でた。
「違う、……そうじゃない」
「まだ、違うね」
振り返ると大きな花束を持ち、ネイビーのスーツを来た高柳さんが立っていた。眩しい笑顔、口から吐く白い息が輝いて見えた。
「イケメンのお迎え付きとか勝ち組やんか!!伊織〜おめでとう」
自分の意志とは違う方向に話が進んで行く事がこんなにも窮屈で悲しいなんて、初めて知った。
また、紛れた。人混みにブラウンが。
見失ってしまうと、心が焦り声が漏れ出た。
「陸……」
「伊織ちゃん……?おったん?三日月の人」
気を利かせてそそくさと去って行った旧友。取り残された私と高柳さん。
顔を覗き込まれて問われ、頷いた瞬間ぽろりと涙が零れた。
「そう、じゃあ行きぃよ。俺はずっとここで待っとるからね」
くるりと私の背中側に回り込んだ高柳さん。そっと背中を押されて耳元で囁かれた。
「とっても綺麗やから、行っといで」