あおいぽりばけつ
「ここ密かなパワースポットなんやって」

駐車場から見えるのはなんて事ない、神社。
観光客はぽつぽつ。自分が想像しているパワースポットのイメージとは少し掛け離れていた。

近くに海がある事を車の窓から見ていたからか、潮の匂いを微かに感じる。胸がソワソワと騒ぎ出して辺りを見渡した。そんな私に向かい、高柳さんが言う。

「ここ、願望成就で有名らしいよ」

少し歩きにくい道、何も言わずにそっと手を差し出されて断る事も出来ずに私達は手を繋いで歩いた。
大きくて温かい手。私の一回りも二回りも大きな手が私を誘導する。

「高柳さんってご利益とかパワースポットとか信じるんですね」

「今までは信じなかったけど、今は信じたいなって思うっちゃね」

おどけた表情で笑って、私の手を一度強く握り締めて高柳さんが言った。途端に手の温もりが重たく感じれて、居心地が悪くなってしまう。

「おみくじ、後で引こや」

会社でも、二人で食事に行った時にも見せない、どこか浮かれた様な高柳さんに自然と頬が緩む。
少年の様に、はつ恋のように、私と過ごす時間を大切に楽しむ高柳さんに恋が出来たら、私はどれだけ幸せだっただろうか。
泣きたいのに何処か可笑しくて、顔が歪んでしまう。

お賽銭を投げ入れて手を合わせる。ちらりと盗み見る高柳さんは目を瞑り、何かを願っている。その願いが透けて見えるし、その願いを叶えてやれない事を自分がよくよく知っているから、私も必死に手を合わせた。

無責任で、自分勝手で、独り善がりなお願いを神様に。

高柳さんが、これから先ずっと幸せでありますようにと。
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