あおいぽりばけつ
目当ての階に着き、黙って私の前を歩く背中。陸よりも大きくて逞しい背中。
私は誰かに縋りたいと願った筈なのに、結局陸の背中、に縋りたかったのだ。
「どうぞ」
部屋の鍵を抜いて振り向いた笑顔を見ても募るのは罪悪感だけだった。
促されるまま、部屋に入る。
「うわぁ、広い!!」
先程の微妙な空気を打ち消すために無理をしてはしゃいで見て、虚しくなった。だって、高柳さんが悲しそうに笑うから。
この悪循環の根源は、誰でも無い。私だ。
「高柳さん!海です!海見える」
断ち切れない悪循環、紛らわす為に明るく振る舞えば曇る表情。間を持たせたくて部屋の隅々を見て周り、アメニティを眺めていても高柳さんの声は聞こえない。
「海、行きましょうか」
声のトーンを落として振り向くと、「そうやね」とやっと返事が返ってきた。
携帯と財布だけを手に部屋を後にした。海へと向かうエレベーターでもロビーでもお互い無言のままだった。
どちらともなく結ばれた手は何処かよそよそしくて、寒さが増した気がした。
丁寧に書かれた海への案内図を二人並んで眺めて、いつもよりも遅いペースで歩き出した。
五分も経たずに強い風が吹く。
鼻を擽る潮風が私を急かして止まない。視界を塞いだ自分の髪を掻き分けてみれば目の前には一面の青が広がっていた。早く、早くと目をこじ開けて溜息が漏れた。
「綺麗……」
手を解き、気が付くと靴を脱いでいた。タイツで走り出した私を高柳さんはどんな顔で眺めていただろうか。そんな事はもう考えられなかった。
私を飲み込む砂の感触にただ夢中だった。私は海がこんなに好きだっただろうか。ずっと近くにあった。小さな頃から私の毎日には海が合ったのに、陸に恋をしてから更に海が好きになっていた。
「寒いです」
「だろうねぇ」
少し離れた場所で私の靴を拾い上げて高柳さんが笑った。
寒い時期だ。周りには誰も居ない。私と高柳さん、それと二人をじっと眺める青い海。
爪先で砂を蹴り上げて、押し寄せる波から逃げて、濃い潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。先程まで私を苦しめていた息苦しさがすぅ、と消え去る。
「あーあ、……海の泡になりたいな」
呟くと高柳さんが私の手を握り、そっと靴を履く様に促した。名残惜しそうに渋っているとしょうがないなと言わんばかりの顔を浮かべて、砂浜に腰掛けた。
私は誰かに縋りたいと願った筈なのに、結局陸の背中、に縋りたかったのだ。
「どうぞ」
部屋の鍵を抜いて振り向いた笑顔を見ても募るのは罪悪感だけだった。
促されるまま、部屋に入る。
「うわぁ、広い!!」
先程の微妙な空気を打ち消すために無理をしてはしゃいで見て、虚しくなった。だって、高柳さんが悲しそうに笑うから。
この悪循環の根源は、誰でも無い。私だ。
「高柳さん!海です!海見える」
断ち切れない悪循環、紛らわす為に明るく振る舞えば曇る表情。間を持たせたくて部屋の隅々を見て周り、アメニティを眺めていても高柳さんの声は聞こえない。
「海、行きましょうか」
声のトーンを落として振り向くと、「そうやね」とやっと返事が返ってきた。
携帯と財布だけを手に部屋を後にした。海へと向かうエレベーターでもロビーでもお互い無言のままだった。
どちらともなく結ばれた手は何処かよそよそしくて、寒さが増した気がした。
丁寧に書かれた海への案内図を二人並んで眺めて、いつもよりも遅いペースで歩き出した。
五分も経たずに強い風が吹く。
鼻を擽る潮風が私を急かして止まない。視界を塞いだ自分の髪を掻き分けてみれば目の前には一面の青が広がっていた。早く、早くと目をこじ開けて溜息が漏れた。
「綺麗……」
手を解き、気が付くと靴を脱いでいた。タイツで走り出した私を高柳さんはどんな顔で眺めていただろうか。そんな事はもう考えられなかった。
私を飲み込む砂の感触にただ夢中だった。私は海がこんなに好きだっただろうか。ずっと近くにあった。小さな頃から私の毎日には海が合ったのに、陸に恋をしてから更に海が好きになっていた。
「寒いです」
「だろうねぇ」
少し離れた場所で私の靴を拾い上げて高柳さんが笑った。
寒い時期だ。周りには誰も居ない。私と高柳さん、それと二人をじっと眺める青い海。
爪先で砂を蹴り上げて、押し寄せる波から逃げて、濃い潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。先程まで私を苦しめていた息苦しさがすぅ、と消え去る。
「あーあ、……海の泡になりたいな」
呟くと高柳さんが私の手を握り、そっと靴を履く様に促した。名残惜しそうに渋っているとしょうがないなと言わんばかりの顔を浮かべて、砂浜に腰掛けた。