あおいぽりばけつ
化粧も剥がれて見るに耐えない顔でホテルのロビーに滑り込むとチェックインの時に見たお土産屋さんに目がいった。吸い寄せられる様に近寄れば、見たことも無い土産の箱がずらりと並んでいた。

高柳さんが待つ部屋に帰りたくない様な気がして、店内に足を進めた。誰にも土産を買う予定なんてないのに、ただ、ぐるぐると。

名所がプリントされたクッキーのサンプルが私を嘲笑う。人の優しさに甘える私を。

綺麗に包装された箱の山が私を無視する。人の気持ちを弄ぶ私を。

明るい笑顔でレジに立つ店員が怖い。自分勝手な涙を流して悲劇のヒロインぶるなと言われてしまいそうで。

どうしてだろう、周りの全てが怖くなる。

私はもう、自然に笑えるようになったのに。

笑顔を浮かべようとして、顔が引き攣った。引き攣る頬に手を当て心にヒビが入った。また、私は心から笑えなくなっていた。笑顔を、と思って浮かべるその笑みは、心からの笑みでは無い。いつからだろうかと立ち止まり箱の山を睨んで心が色褪せる。

最後に陸と会った成人式から、私はまた上手く笑えなくなっていたじゃないか。それを見て見ぬふりをして笑えていると信じ込ませていたのか、自分を。

いつだって私は、自分に言い聞かせて自分を騙して生きて来ていた。情けないような、どうしようも無いような。

また涙が落ちてきそうになり眩いライトを見上げてから辺りを見渡した。
ふとキーホルダーがたくさんかかった回転棚に目がいく。

ふらりふらりと歩み寄り、くるりと回した。誰が買うのか分からない龍の絡んだ剣のキーホルダー、ご当地キャラ。子供の頃、この中からひとつ好きな物を選んで買って貰った記憶が蘇る。あの頃、純粋だった私は一体どこに行ってしまったのだろうか。

ぎぃぎぃと鳴く回転棚を二周、三周。上から下へ、下から上へ。眺めて時間を食い潰す。

花を象ったステンドグラスのキーホルダーが目に止まる。

チューリップにカーネーション、百合に菫に、薔薇。

「綺麗だね」

独り言ちて、私は歩き出した。高柳さんが待つ部屋へ。
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