あおいぽりばけつ
会話が弾むなんて滅多にない。それでも別に構わない。陸がいるならそれで良い。
気まずい雰囲気にいたたまれなくなって、注文した料理が全て揃ってもお腹は満たされない。アルコールを流し込んでも意識は潰れやしない。
ただ口に運び胃に入れる事に集中をしていると、陸がガタリと立ち上がりこう言った。
「先出とるわ」
そんな最低な言葉も、陸なら許せてしまう。
後を追うように、お冷を口に含みながら伝票を握り締めてレジに並んだ。くたびれたファスナーを開いて紙幣を四、五枚。返ってきた硬貨をコインケースに投げ入れ陸が待つ外に飛び出した。
「いつものホテルでええか」
安くも高くもない、色気も味気も無い普通のラブホテル。それでいいの。私と陸はそれで。
夜風に吹かれて途端に馬鹿らしくなる夜はある。
虚しくて辛くて、陸の体温が鬱陶しくなる夜。
ヒールを履く私の事なんて、お構い無しに先へ行く陸を眺めて、どうせ目指す先は同じなのだからと自分のペースで歩を進める。
今日はノー残業デー。辺りには酔ったサラリーマンにOL、若者も老人も、街には人が溢れかえっていた。
ぶつからぬ様に人混みを縫うように歩いていると、私は今一体何をしているのだろうと考え始めてしまいそうになる。
「あれ??伊織ちゃんやない??」
後ろから不意に名前を呼ばれたけど、反応が遅れた。
「やっぱり!!伊織ちゃんやん!!」
腕を引かれて振り向くと前の職場の同僚が居た。あぁ、と何とも言えない顔を浮かべていると酒に酔い饒舌になっているのか同僚が口を閉じることは無い。
「久しぶりやんか!何?一人で何してんの?」
きゃっきゃと騒ぐ同僚に吸い寄せられてわらわらと懐かしい顔ぶれが集まる。出来れば会いたくないと願う顔がここに無いことを確認して、足が完全に止まってしまった。
「久しぶりだね」
「元気か」
「今何してんの」
「一人なら一緒に呑もう」
四方八方から飛び交う声を躱せずに突っ立っていると、輪から離れた一人が「そうだ」と声を上げた。
「高柳さんおるで」
即座に身体が凍り始めたように固まった。
いないと安心して足を止めてしまった事を激しく後悔した。後悔したところでそれは無駄。今更切り上げてここから離れる勇気も私には無かった。
「高柳さん!!吉岡さんがいました!」
まるで宝探しの宝を見つけたようなワクワクした目で言う人を恨めしそうな目で睨み付けた。
遠くから歩み寄ってくる、見慣れた姿。
「久しぶりやね、伊織ちゃん。ちょっと痩せたんやない?」
顔がほんのり赤い高柳さんが私の髪を撫でた。囃し立てる同僚達が鬱陶しい。何も言えずにいると後ろから私の頭を撫でる高柳さんの手を叩く音がした。
気まずい雰囲気にいたたまれなくなって、注文した料理が全て揃ってもお腹は満たされない。アルコールを流し込んでも意識は潰れやしない。
ただ口に運び胃に入れる事に集中をしていると、陸がガタリと立ち上がりこう言った。
「先出とるわ」
そんな最低な言葉も、陸なら許せてしまう。
後を追うように、お冷を口に含みながら伝票を握り締めてレジに並んだ。くたびれたファスナーを開いて紙幣を四、五枚。返ってきた硬貨をコインケースに投げ入れ陸が待つ外に飛び出した。
「いつものホテルでええか」
安くも高くもない、色気も味気も無い普通のラブホテル。それでいいの。私と陸はそれで。
夜風に吹かれて途端に馬鹿らしくなる夜はある。
虚しくて辛くて、陸の体温が鬱陶しくなる夜。
ヒールを履く私の事なんて、お構い無しに先へ行く陸を眺めて、どうせ目指す先は同じなのだからと自分のペースで歩を進める。
今日はノー残業デー。辺りには酔ったサラリーマンにOL、若者も老人も、街には人が溢れかえっていた。
ぶつからぬ様に人混みを縫うように歩いていると、私は今一体何をしているのだろうと考え始めてしまいそうになる。
「あれ??伊織ちゃんやない??」
後ろから不意に名前を呼ばれたけど、反応が遅れた。
「やっぱり!!伊織ちゃんやん!!」
腕を引かれて振り向くと前の職場の同僚が居た。あぁ、と何とも言えない顔を浮かべていると酒に酔い饒舌になっているのか同僚が口を閉じることは無い。
「久しぶりやんか!何?一人で何してんの?」
きゃっきゃと騒ぐ同僚に吸い寄せられてわらわらと懐かしい顔ぶれが集まる。出来れば会いたくないと願う顔がここに無いことを確認して、足が完全に止まってしまった。
「久しぶりだね」
「元気か」
「今何してんの」
「一人なら一緒に呑もう」
四方八方から飛び交う声を躱せずに突っ立っていると、輪から離れた一人が「そうだ」と声を上げた。
「高柳さんおるで」
即座に身体が凍り始めたように固まった。
いないと安心して足を止めてしまった事を激しく後悔した。後悔したところでそれは無駄。今更切り上げてここから離れる勇気も私には無かった。
「高柳さん!!吉岡さんがいました!」
まるで宝探しの宝を見つけたようなワクワクした目で言う人を恨めしそうな目で睨み付けた。
遠くから歩み寄ってくる、見慣れた姿。
「久しぶりやね、伊織ちゃん。ちょっと痩せたんやない?」
顔がほんのり赤い高柳さんが私の髪を撫でた。囃し立てる同僚達が鬱陶しい。何も言えずにいると後ろから私の頭を撫でる高柳さんの手を叩く音がした。