あおいぽりばけつ
甘い赤い実は誰とも共有したくない。私だけが知る、甘い実。


「ごめんね、この間は」

金曜日の二十時。待ち合わせ場所のコンビニで待っていた友人目掛け、開口一番謝った。

「ん〜、ええんやけどさぁ……」

頭を下げる私に何か言おうとして、友人が口篭る。
陸と、陸の友人との待ち合わせは二十時半。少し早めに会いたいと言い出したのは友人の方だった。

コンビニで缶コーヒーを買い、灰皿の前で話し出した。

「彼氏じゃないんよね、この間の電話の男って」

「違う。……なんだろ、セフレ、でもないけど」

紫煙を吐き出して私が言うと、友人は溜息と一緒に煙を吐いた。静かに静かに、友人は問う。

「いつから?」

答えに詰まり、煙を二度三度吐いて言葉を探した。その間、私を煽る様にコンビニの入口から軽快なチャイムが鳴り続けている。

「……高三の夏前、くらいから」

チャイムが早く言えと言っているような気がしてのろのろと口にする。
隣から小さな叫びが聞こえて恐る恐る顔を向けると今にも泣きだしそうな友人がいた。

「なんで言ってくれんやったんよ……もしかしてあの椿西の……?」

「言いにくかった」

私の答えを聞いて友人が人差し指で目尻を押さえた。そして小さく、「馬鹿だね」と震える声で呟いた。

「あんた、好きなん?」

「分からん。けど、多分好きやから何回も会うんやないかな」

煙草が灰になる。指が熱くなる。言葉にして胸が痛くなる。まさか友人に陸との関係を打ち明ける日が来るなんて。爪先から脳天まで、毛穴と言う毛穴が開き出した感覚が駆け巡る。

「ずっとそういう関係でええん?」

オイルライターが良い香りを漂わす。
また答えに困り、いつかの夜、陸が私に言った言葉を借りる。

「う〜ん、けど私が自分で選んだ道じゃしねぇ。ええん違うんかな。わからんけど」

「……あんたがそれでええんやったら、私は何も言わんけど……」

そこまで言って、時間切れ。横断歩道の向こうから見慣れた影が此方に歩み寄ってきた。
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