あおいぽりばけつ
「陸!!」
半歩前に出て名を呼ぶと顔を上げ、手を小さく挙げて陸と友人が笑みを浮かべた。会えば心が浮かれて仕方ない。先程まで鬱屈とした気分だったのに、一転晴れやかな気分だ。
「はじめまして」
あんな話をした後だからだろうか、私の隣にいる友人が少し低い声で言い、会釈した。その会釈よりも更に深く頭を下げて陸が笑った。
「はじめまして。高木陸言います。こっちツレの浅田」
人当たりの良さそうな笑顔で浅田と言う男が頭を下げた。二人の人当たりの良さに少し警戒心が薄れたのか、友人の表情もほんの少し、穏やかになったように見える。
「どうも、浅田です。はじめまして」
「ほんじゃ、立ち話も何じゃし行こか」
挨拶も早々にすたすたと陸が歩き出した。陸を追い、隣に立とうとしてもヒールが邪魔をした。
気が付くと陸の隣には友人がいて、私の隣には浅田さんがいた。少し、面白くないと思ってしまった。必死に早めていた歩くペースを緩めた。
「あ〜、陸、足速いよな」
私の顔を見て申し訳無さげに言われ、適当に相槌を打ち前の背中を眺める。
気を遣わせてしまうのも悪いと気持ちを切り替えて話を振った。
「浅田さんって陸と仲良いん?」
「まぁ、それなりに?……陸がやんちゃしとった時期からの知り合いやね」
心が迷う。陸の事を聞きたい自分と、聞いてしまえばまた傷ついてしまうと怖がる自分がいた。私よりもきっと浅田さんは陸の事を良く知ってるだろう。好みも、嫌いなタイプも、どんな人間かも。
迷い、歩き、立ち止まる。
そんな私を困った顔で眺めて浅田さんが口を開いた。
「……陸と長いん?」
「……長い、のかなぁ」
たどたどしく続ける会話がじれったい。
そんな二人を置いてけぼりにして大衆居酒屋の暖簾を潜る陸を見て、聞かない方が多分幸せなんだろうと自分に言い聞かせて後に続いた。