あおいぽりばけつ
赤い実は弾けない。
じっとそれを見上げてみても風が悪戯に柔く揺らすだけ。

三度目の行為の後。

「あん時、……初めて、じゃあ無いわな」

固いシーツの上で陸がぽつりと口を開いた。
乱れた白の中で私は蹲り、「うん」と曖昧に漏らす。どう前向きに考えても、その問の後に続く言葉が良いものだとは思えずに顔が曇る。

あの日、ハリボテのお城へと飛び込んだ。差し出された赤い実を口にした。そうすれば、このお城を去る時きっと何かが変わると思ったから。そう信じていたから。

「初めての女は重いけぇの、……良かったわ」

ざらついた流行りの曲に混じるその一言にどうしてだろう、泣きたくなった。いや、泣いていた。

こんな奴など嫌いだと自分に言い聞かせた所で、抱かれてしまったのだからふとした時に燻るのだ。燃え盛るよりも少し前。ぷすり、ぷすりと身体のあちこちを燻す火種が。


初めての行為の後。服を着ながら陸は私をちらりと見て牽制するようにこう言った。

「ワシは誰かと付き合うたりする気は無い」

広いベッドの真ん中に私を沈める言葉。言葉は私の腹部に重くのしかかり沈めていく。

「そう、なん」

溺れてしまう。

何に?

ベッドに?

理解出来ない、何かに?

陸に?

やっと口から吐いた一言を聞いて、また陸は私の後頭部を鷲掴みにするのだ。

「おう。けどアレじゃ。お前が会いたい言うなら会うちゃる」

きっとここが分かれ道。NOとはっきり言わなければならないと頭が訴える。
でも頭で考えるよりも先に、口が動いた。

「ほんならケー番教えて」

踏み外した道の先にある分かれ道。
どちらを選べどもう何も変わるまい。
なら私は、闇の中に転がってしまおうと目を閉じた。
目を閉じ、転がり落ちて、茨の棘で身体を紅く染めてしまおうと。
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