あおいぽりばけつ
隣の芝生は青く見える。周りに成る赤い実は艶々と輝いて、食む者全てを笑顔にしていく。その姿を眺めて、私は。

「病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

厳かな雰囲気の教会で、友人の門出を祝う。お目出度い日に、私の心も幾分晴れやかだ。白いマーメイドラインのドレスにマリアベールを着こなす友人の後ろ姿を眺めて、胸が熱くなった。

「ねね、あの旦那さん、元ヒモらしいよ。よくそんなのと結婚決めたよね」

陸との飲み会に一緒に行った友人がこそりと私に耳打ちをした。
見た目は真面目そうに見えるのに、意外だなぁ。そんな在り来りな感想しか浮かばずに、言葉を飲み込んだ。

「結婚とかまだまだ先で良いよねぇ」

披露宴会場へ向かいながら友人が嘲笑うように言うから、私は問う。

「そういやぁあんたは良い人おらんの?」

私の言葉に鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をして吹き出した。友人の唾が私のスカートに飛び散ったのは、この目出度い日に免じて見逃してやろう。

「ずっと彼氏おるよ?」

「……え?」

「高校卒業した位に付き合った彼氏とまだ付き合ってる」

初めて聞いた。驚きを隠せずに思わず大きな声を出してしまう。

「初めて聞いたし!」

「そら、あんた。就職してなんやかんやで忙しい言うからなかなか会えんかったんやから仕方ないやん」

仲間と思っていたのに、何だか騙されたような気持ちになる。曇る顔で私は更に友人を詰める。

「えっえっ、じゃあなんでこの間の飲み会来たん?彼氏は良い言うん?」

「いやまぁ友達の知り合いとの飲みくらいでガタガタ言うような男とは付き合わんしな」

「ねぇ〜、仲間だと思ってたのにぃ……裏切り者やん」

「勝手に仲間意識芽生えさせんなよ」

いじけたような顔をして言えば、笑われた。そして笑顔の友人からスっと色が消え、少し暗いトーンになる。

「……こないだの、陸って子とはどうするん」

「……どうって?」

「まだ連絡取りよるん?」

ライターを取り出しながら頷くと友人が大きな溜息を吐いた。煙草に火を付けて黙りこくると友人が私の横に立ち言葉を続けた。

「誰か紹介しようか?彼氏のツレやったら良いの探してって言えるし、陸って子よりマシだよ」

「私は陸が良いんよ」

間髪入れずに私がそう言うと泣きそうな顔で押し黙る。
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