あおいぽりばけつ
ぷかぷかと浮かぶ海の真ん中。塩辛い海水は私の涙と、少しの鼻水だろうか。
陸が好きなのに、一緒にはなれない。
わかってはいるのに、誰よりも知っているのに時たまそれがどうしても受け入れられなくて辛くなる。この海に沈むのはそのどうしても受け入れられない時なのだろうか。
数年、私を捕まえて離さない癖に幸せにはしてくれない陸が恨めしい。揺れる黒髪も、鋭い瞳も、浮き出た喉仏も全てが私を虜にする。
恋に恋をする年はとうに過ぎた。
なのに未だ、出会ったあの頃と変わらぬ胸の疼きに悶えては泣いてを繰り返している。
馬鹿だなぁ、と思うのに呼ばれたら会いに走る。
もう連絡は無視をしようと誓って三秒、「来て」の一言に絆されて呆気なく誓いは破られる。
この恋の結末を、もう薄々気付き始めているのにずっと手を目に当てたまま、ボロボロになりながら走り続けているなんて、本当に馬鹿だ。
「ねぇ、大好きよ」
そう一人で呟いても、返ってくるのは冷たい汗と虚しさだけだ。
深い海の底に沈めたら、どれ程幸せだろうか。
中途半端に優しくするのなら、もういっそ突き放してくれれば良いのに。
人魚姫にも、泡にもなれない私は一体何なのだろう。浮いて流れて、汚れたゴミなのか。
沈んで、沈んで、そう願う私は、一体何がしたいのか。
「愛してる」
そんな歯の浮くような言葉など、求めていない。ただ、もう少しだけ、陸の心の傍に寄せて欲しいだけ。
肩を抱かれて歩いたあの日、私を疼かせたのは恋心から覚めたからだろうか。
だけどまだ、目を閉じて、愛される事を夢見ていたいのだ。
まだ、信じていたいのだ。