社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 頭を下げながら、私はしばらく顔を上げられなかった。今更ながら、おしゃれでもなんでもない自分の黒縁メガネが恥ずかしく思える。

「わざわざご足労いただき恐縮です」

 ビジネススマイルを浮かべた社長を、ちらっと盗み見た。

 一ヶ月と少し前に言われた言葉が、今頃胸に突き刺さる。

『最新のファッションを扱うクライアントとやりとりするのに、その黒縁メガネで対応する気か?』

 アパレルブランドの社員ふたりよりも、さらに華々しいオーラをもっているわが社のトップは、その見た目からは想像できないほど威圧感があって、厳しい。

『もっとスティリスの社員としての自覚を持て』

 身長があるから、胸が大きいから、目立ちたくない、地味メガネのままでいい。それでも変わらなきゃいけないのなら、せめてゆっくり少しずつ……。そんなふうに甘えた考えで、私はわざと社長の言葉と向き合わないようにしてきた。


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