いちごキャンディ×ブラックチョコレート
全身が心臓のようにドクンと跳ね上がる。

耳元で彼の吐息を感じ、甘いセリフを吐かれたわけじゃないのに痺れた。


「な、らも……と」


艶気を含んだ低い声で、ゆっくりと私の名前を口にする。

名前を呼ばれただけなのに、まるで私のことが好きみたい。

そんなことはない。

これはそういうこととは違う。

それなのに、なんでこんな気持ちになるの?

失恋で弱った心に彼の暖かい気持ちが入り込んできたから?


「ま、槇さ……」


うっとりするほど幸福感に満たされ、自然と彼の名前を口にする。

名前を呼んだ瞬間、彼の体がビクッと微かに動いた。


「…………これはやばい」


ボソリと呟いたその声は私の耳にダイレクトに届いた。
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