いちごキャンディ×ブラックチョコレート
暖かい。

再び彼の温もりを感じる。

先程の力強いものとは違い、割れ物に触るかのように優しく抱きしめる。

それはまるで恋人のようで、私は彼に身を委ねた。


「楢本」


胸からダイレクトに声が響く。


「はい……」

「キスの経験は?」

「へ!?」


思わず槇さんの顔を見る。

何を考えているのか分からない真剣な表情で私見つめる。

何故そんなことを聞くんだろう。

でも嘘をつく気にはなれなくて、私は正直に答えた。


「……ないです」


この歳になって恋人はいたことないし、キスの経験だってない。

別に大切に取ってるというわけじゃないけど、そういうことにならなかったんだから仕方ない。
< 77 / 194 >

この作品をシェア

pagetop