お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
店内は昼時を過ぎていたせいか、ほかにお客の姿はない。
メニュー表を見て迷う修矢に、千花があれこれと提案してくる。
今日のおすすめはとれたてのアジを使ったアジフライ弁当ですだとか、この煮物のじゃがいもは親戚の畑でとれたものなんです、だとか。無反応を貫く修矢に臆することなく、にこやかに話しかけてきた。
さらに、千花は弁当を手渡してくれるときに、「おせっかいかもしれませんが、無理はしないでくださいね」と優しい笑みまで浮かべる。
千花にしてみれば、それが客商売だといえばそれまでだろう。どのお客にも平等に笑顔で接するのが基本。だが、修矢にはそれが新鮮に映った。
ぶっきらぼうで無愛想。それは修矢が幼い頃から言われてきた代名詞だった。
一歳違いの兄・一樹は成績優秀で、比べられるのが常。学校の先生はもちろん、両親にも「お兄ちゃん、すごいね」と言われ続けて育ってきた。
それらへの反発だったのか。自分では険しい表情をしているつもりはないが、いつも怒っているみたいだと周りから言われ、近寄りがたいと敬遠されてきた。
今もそうだ。病院ではごく一部しか修矢には近づかず、業務連絡以外を話すのはまれ。
そんな修矢を怖がることなく、また躊躇う素振りも見せず、千花はあれこれとかまってくる。