お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

いつだったか、修矢の指先にできた小さな切り傷を見つけた千花が、「絆創膏ならあります」と半ば強引にそれを貼ってくれたこともあった。雨の日のタオルと傘もそうだ。

これまで修矢に近づいてきた女がいなかったわけではない。だが、しばらくすると、なにを考えているかわからないと言われ、たいていが離れていく。修矢自身も、それを追うほどに執着はなかった。

ところが千花は、修矢がいくら無愛想に接しようが変わらぬ優しい態度で接し、修矢は日を追うごとに調子を崩された。最初はお節介に感じていたそれが、いつの間にか、千花に話しかけられるのを心待ちにする自分がいることに気づいた。

かといって、自分から声を掛けるほどの愛想は持ち合わせていない。長年にわたり無愛想でぶっきらぼうと言われ続けてきた呪縛というやつか。
柄にもなく淡い想いを抱きながら、修矢の心は戸惑いに揺れていた。

久城家に千花との見合い話が舞い込んだのは、そんなときだった。
これを逃す手はない。
修矢はいつになく強引だった。特定の女を手に入れようと思ったのは初めてだ。

最初こそ結婚に二の足を踏んでいた千花だったが、半ば丸め込むような形で結婚の話を進め、こうして同居まで持ち込んだ。
そこまで必死になる自分に驚きが半分、困惑が半分。自分がこんなことになるとは予想もしていなかった。

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