お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

千花との暮らしは、修矢にとって新鮮なことばかり。
〝いってらっしゃい〟で見送られ、〝おかえりなさい〟と出迎えられるくすぐったさ。

朝目を覚ませば鮭にだし巻き玉子、ネギと豆腐の味噌汁という、これぞ日本の食卓といった朝食がダイニングテーブルに並ぶ。家政婦の作る洒落たホテル風の朝食とはわけが違う。
千花は手を変え品を変え、修矢のお腹を満たしてくれているのだ。

誰かと一緒に料理を作ったりするときが訪れるとも思っていなかった。

もちろん、それだけではない。笑ったりすねたり、くるくる変わる千花の表情は、修矢の冷めきっていた心を優しく溶かしていく。

総合病院の院長である父と、大学教授の母。忙しいふたりは家を空けることも多く、兄の一樹とふたりだけの毎日は当たり前だった。
体調を崩して看病をされた記憶がなければ、千花のように心配して付き添ってくれた人もいない。

ベッドサイドで眠っていた千花を見つけたとき、修矢の中で千花の存在がひときわ大きくなったのを感じずにはいられなかった。


「……炊き込みごはんに……します、か? それともひじき……」


隣で眠る千花が、突然しゃべりだす。

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