お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

(炊き込みごはん? ひじき?)

はっきりとはしないが、そんな言葉を修矢はたしかに耳にした。


「千花、どうした?」


聞き返しても、返ってくるのは規則正しい寝息だけ。


「……寝言かよ」


しかも夢でまで弁当屋で働いているとは。
修矢はおかしくなり、ふっと笑みを漏らした。

(っていうか反則だろ、これ)

寝返りを打った千花が修矢の方に身体を向けたことで、一気にその距離が詰められる。不覚にも弾んだ鼓動が修矢を戸惑わせた。

手を伸ばせば届く距離に千花の寝顔があり、改めて意識したばかりの想いに翻弄される。触れようと思えば触れられる。だが、今はまだそれはできない。千花の気持ちが完全に修矢を向くまでは。

(なんの試練だよ……)

今すぐ抱いてしまいたい。

その唇がやわらかいことを知っている修矢は、膨らんでくる衝動を抑えることに必死になる。
そのくせ千花に背を向けることはせず、息をひそめてその寝顔を見つめ続けた。

< 131 / 271 >

この作品をシェア

pagetop