お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「あの……、見ないでもらってもいいですか?」
修矢が見ているから余計に手が震えるのだ。ところが修矢は視線を逸らす気はいっさいないらしい。
「緊張することはないだろう? そんなのちゃちゃっと書けばいい」
「そんなのって! ちゃちゃって! そんなに軽いものじゃないですから」
千花が思わず修矢を睨むと、修矢は鼻を軽く鳴らして、わずかに目もとを細めた。
「わかったから。とにかく書け」
どうして上から目線なのだと千花は憤ったが、ここで怒ってもまた鼻先で軽くあしらわれるだけ。観念して書き始めた。
(それにしても、この紙切れたった一枚で結婚が決まっちゃうのよね……)
そう考えるとペラッペラの紙が、ものすごく重いものに思えてくる。書き終えて折り畳み、修矢に手渡すとき、大事なものを扱うかのように両手にのせて差し出した。
「書き終わりました」
修矢は“うむ”と言った様子で軽く頷くと、チェックするように一度開き、サーッと視線を滑らせる。そしてなにも間違いがないことがわかると、それを再び丁寧に下り封筒へしまった。
「あとで俺が出しておく」
「よろしくお願いします」
千花はテーブルにつくほど深く頭を下げたのだった。