お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

「あの……、見ないでもらってもいいですか?」


修矢が見ているから余計に手が震えるのだ。ところが修矢は視線を逸らす気はいっさいないらしい。


「緊張することはないだろう? そんなのちゃちゃっと書けばいい」
「そんなのって! ちゃちゃって! そんなに軽いものじゃないですから」


千花が思わず修矢を睨むと、修矢は鼻を軽く鳴らして、わずかに目もとを細めた。


「わかったから。とにかく書け」


どうして上から目線なのだと千花は憤ったが、ここで怒ってもまた鼻先で軽くあしらわれるだけ。観念して書き始めた。

(それにしても、この紙切れたった一枚で結婚が決まっちゃうのよね……)

そう考えるとペラッペラの紙が、ものすごく重いものに思えてくる。書き終えて折り畳み、修矢に手渡すとき、大事なものを扱うかのように両手にのせて差し出した。


「書き終わりました」


修矢は“うむ”と言った様子で軽く頷くと、チェックするように一度開き、サーッと視線を滑らせる。そしてなにも間違いがないことがわかると、それを再び丁寧に下り封筒へしまった。


「あとで俺が出しておく」
「よろしくお願いします」


千花はテーブルにつくほど深く頭を下げたのだった。

< 141 / 271 >

この作品をシェア

pagetop