お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
◇◇◇
さんざん迷った挙句、千花はコーヒーを入れて部屋まで運ぼうと準備していた。
突然現れた兄の一樹のひと言が千花を混乱させ、しばらくの間はリビングで呆然としていたが、そうしていても始まらない。コーヒーを運ぶ素振りで様子を見てこようと決意したのだ。
ところが、ちょうど入れ終えてトレーにのせたところで修矢たちが部屋から出てきた。さっきの不穏な空気はどこへいったのか、和やかなムードだ。
「千花さん、さっきはいきなり悪かったね。自己紹介もせずに驚いたでしょ」
「あ、いえ」
人懐こい笑顔で一樹に言われ、千花が急いで首を横に振る。正直に言ってしまうと気が動転したが。
千花がチラッと見た修矢はどこか疲れたような、それでいてホッとしたような複雑な表情だった。
(いったいなにを話していたのかな……)
気になったものの立ち入りすぎるのも気が引けて、千花はぐっとこらえた。
「兄の一樹です」
「千花です。よろしくお願いします。コーヒーでもいかがですか?」