お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「その弁当、俺が食べる」
一樹が唐突に言いだした。気づけば車は、千花の見知らぬ公園に止められている。
「えっ……」
一樹は呆気にとられる千花の膝からバッグを取り上げ、中から弁当箱を出した。
「修矢に食べさせないのなら、別に俺が食べたっていいだろう? 昼飯まだだったんだよね。おっ、うまそう」
早速ふたを開けた一樹が声を弾ませる。素早く割り箸を割ったかと思えば、「いただきます」と言ってポテトの肉巻きを頬張った。
「――ん! うまい! さすが弁当屋の娘だけあって料理上手だな」
一樹は誉め言葉を何度も口にしながら、次から次へと箸を動かす。そして、ものの十分としないうちに、ふたり分として作った弁当をすべて平らげてしまった。
〝弁当屋の娘〟
一樹のその言葉が心に深く突き刺さる。
製薬会社の令嬢との格差は誰が見ても歴然。見合い話を聞かされたときに感じた〝分不相応〟の四文字が蘇る。どう考えても、修矢に相応しいのは美和子の方だ。
千花は、いきなり目の前に突き出された現実をどう処理したらいいのかわからなかった。