お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

◇◇◇

一樹に送り届けられたマンション。
千花はキッチンで弁当箱を洗いながら、再び物思いに耽っていた。

この結婚は間違いだったのかもしれない。
ふと、そんなことを考える。

一流外科医とのギャップは、どうしたって千花には埋められない。妻になったからといって、均衡になるわけでもないのだ。

美和子を見かけたことで、千花はどうしようもない劣等感に苛まれた。

それをなんとか忘れたくて、千花は部屋の掃除を始めた。身体を動かしていなければ、どんどん深みにはまっていくだけ。
すべての部屋に掃除機をかけ、フローリングシートで磨いていく。そうすれば、自分の薄汚れた心も晴れやかになるような気がしたから。

そうしてひと通り掃除を終えた千花は、リビングのテーブルに置き去りにしていた郵便物を選別し、自分宛のものを開封しようとレターオープナーを引き出しに取りに行った。

ところがいつもしまってあるところにはなく、あちらこちらの引き出しを漁っていく。

(あれ? どこにいったんだろう? こっちかな……?)

普段は開けない引き出しに手を入れたときだった。見覚えのある封筒が奥から出てくる。
千花の胸を嫌な予感がかすめた。

< 234 / 271 >

この作品をシェア

pagetop