お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

おそるおそる封筒の中に手を入れ、中に入っているものを取り出す。するとそれは、千花がまさに予想したものだった。

婚姻届。
すべての欄が埋められ、最後に千花がサインをした婚姻届だったのだ。

(うそ、どうしてこれがここに?)

心臓が加速度をつけて速まる。
修矢が出しておくと言っていたはず。

(修矢さん、私に書かせたあとに忘れちゃったの?)

そう考えた直後、千花はそれを否定する。
そうではない。故意的に出さずにいたのだろう。

もしくは、この紙切れ一枚が修矢の中でそれほど重要なものじゃないため、簡単にその存在を忘れてしまったか。そのどちらかなのだろう。

美和子と優奈の登場が、千花の猜疑心を煽った。

千花は、修矢の正式な妻ではなかったのだ。
手から婚姻届がひらりとフロアに落ちる。千花はふらつく足でそのままマンションを飛び出した。

この結婚は間違いだったのかもしれないと考えた自分がおかしくて笑えてくる。


「結婚なんてしていなかったのに。……私は修矢さんの妻でもなんでもなかったんじゃない」

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