お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
声が震え、笑いながら溢れる涙で視界が霞んだ。
今になってみれば、大事な婚姻届をふたりで出しに行かなかったことも引っかかる。
忙しい修矢が出すのではなく、比較的時間のある千花が出すのならまだしも。
自分は昔から成長していない。相手の気持ちもわからず、鈍感なまんま。正真正銘のぼんやりさんだ。
修矢は別の方を向いていたのに、それに気づかずに四ヶ月も。
娘がいながら、修矢が千花と結婚式を挙げた理由はわからない。ちょっとした気まぐれかなにか。美和子とはなにか複雑な事情があって結婚できずに何年も経ってしまったのだろう。
彼女に向けられる優しい眼差しは、愛しい人へのものだった。
自分は愛されていると勘違いして、千花はそれをすっかり信じていた。
元彼のときと同じだ。なにも変わっていない。
なんとはなしにタクシーに乗り込む。行き先を尋ねられ、「誰も追いかけて来ないくらい遠くにお願いします」と告げると、運転手は困ったような顔をした。
どこに行ったらいいのだろう。とにかくここから遠くに。
ひとまず適当に流してほしいとお願いし、ようやく車は走りだした。