お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
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そこに足を踏み入れた途端、千花の口から深いため息が漏れる。
四千五百坪の広大な敷地の中に静謐な佇まいのヴィラが十棟だけ点在するリゾートは、都内から車で二時間のところにあり、上質なサービスを求めるお客に人気だという。
鳥のさえずりが聞こえ、空気が澄んだ高原は、心からリフレッシュできそうな空気で溢れている。
実家に迎えに来てくれた修矢と互いの気持ちを確かめ合ったふたりは、その足で区役所に婚姻届を出してからここへやって来た。もともと千花の誕生日と入籍を祝うつもりで修矢が予約したのだが、思いがけずふたりの距離をさらに縮める場所となりそうだ。
千花の両親が目覚める午前六時を待ち、ふたり揃って顔を出すと、一時はどうなることかと肝を冷やした千花の両親は『あぁよかった』と大きく胸を撫で下ろした。
ふたりとも昨夜は千花同様にほとんど眠れなかったらしく、目の下にくまを見つけたときには、千花も申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
木のぬくもりがたっぷりのヴィラは一棟ずつが独立して建ち、閉塞感を与えないように離れたところにある木製の低い塀により、プライベートも十分に守られている。
ヴィラの敷地内には岩で造られた大きな露天風呂もあり、乳白色のとろりとした温泉が絶えず流れていた。