年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
(そんなこと…上手くいくの…?)


胸の中で呟く。
あんな隙のない人が、そう簡単に輝のことを諦めるのだろうか。


(本当に自分の後継者に…と思っているのなら、何をしてでも手放さないんじゃないのかな)


自分の思う通りになるよう、輝の仕事を操作してくるんじゃないのかな。
今回みたいに外部に圧力をかけ、邪魔をしてくるんじゃないの?


(そりゃ輝は優秀だけど、あの隙のないお父さんに邪魔をされたら……)


北芝電機でも働き難くなるんじゃないの?
そもそも、北芝を辞めて元のオフィスへ戻れとか言われるんじゃないの?

社長の後継者に…ということは、そういうことだもん。
輝がどんなに抵抗しても、いずれはその椅子に収まる人材じゃないの……?


無言のまま考え込んでしまう。
輝はそんな私のことに気づいたらしく、トントンと指先でテーブルを鳴らすと、「望美?」と下から顔を覗き込んできた。


「俺の話、聞いてる?」


窺うように訊ねられて、こくん…と首を縦に振った。
輝はその仕草を見ると安心した様に微笑み、それで…と話を続けようとする。


「今後のことなんだけど」


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