年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
(私はもう…あの腕の中には戻れない…)


自分から彼を切り捨てた。
あんなに好きで、ずっと一緒に居たいと思ってた人に嘘を吐いて、自分から彼を失った__。


(…でも、他にどうしたらいいか分からなかった…)


こんな形以外に取るべき方法が思い付かなかった。
嘘を真実のように言う以外、自分の気持ちを断ち切る方法を思い浮かばなかった。


(ごめんね。輝……)


電話が掛かると厄介だと思った私は、バッグから取り出したスマホの電源を入れ、直ぐに彼の番号を着否設定にした。ラインも通知オフにして、彼からの連絡を断ち切る。

そして、次に取った行動は___



「……もしもし、私、小島望美と言いますが」


彼の父親の秘書に連絡。
報告して欲しいと頼んだ内容は___


「輝とは別れます。…でも、家計を援助して下さらなくてもいいし、私にも賠償とかそんなの、頂かなくてもいいので」


私はお金と引き換えに輝と別れたわけじゃない。
ただ、純粋に彼の未来を考えて、自分が出来ることはこれだと思い、それを実行しただけなんだから。


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