年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
「君はいつも真面目に働いてるんだし、偶には羽目を外してみてもいいんじゃないのか。こっちは何かトラブっても俺がいるんだし、何か困るようなことが起こったら、直ぐに連絡も入れるからさ」


だから常時連絡が付くようにだけはしておけ…と諭され、俺は大袈裟にお礼を言い、電話を切った。

望美の弟からもいつ電話が入ってもいいように留守メモをセットし、望美と言ったことがある場所に向いて走りだす。


……けれど、彼女と言ったことがある場所なんて多過ぎて迷う。望美が何処に居るのかなんて、俺に察しが付くものだろうか。



(何処に居るんだ。望美)


俺には、望美が嘘を吐いてまで別れを選択した理由が不明だった。
借金のことであいつが一枚噛んでいることだけは確かだが、他にも何か言われたのではないか…と思い始めていた。


(どうして俺を頼ってくれなかったんだ…)


走り回りながら自分が情けなくなる。
好きな女の悩みも聞けないような男に、俺は思われていたんだろうか。


(……俺はそんなに頼りない男なのか?)


心当たりは無いこともない。
プロポーズもせずにきたそれが、何よりの証拠だと自分でも思う。


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