年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
私は待って…と声をかけようとしたんだけれど、輝に二の腕を掴まれ、あっさりとその背中を見送ることになってしまった。


「…ねえ、輝」


慌てて振り向き、今からでも遅くないから取り消しに行こうと言うのに、彼は微笑んだままで動かず、「大丈夫」と言い返してくる。


「これは紛れもなくビジネスの提案なんだ。双方の会社の為になることなら、何の問題もない筈だろう」


任せておいて、と言って歩きだす彼の背中を追った。
土井物産のビルを出ると輝はタクシーを止め、私と共に乗り込んだ。



「…さて、じゃあ次は望美の家に行こうか」


明るい声でそう言う彼に困惑。
私は逆に不安になってきて、住所も何も告げずに、このままタクシーを降りたいとさえ考えてしまうのに……。


「望美が住所を言わないのなら、俺が言ってもいいんだけど」


意地悪くそう言う彼に目を向けた。
家に行ってさっきの話をして、そしてそれから輝は、どうするつもりでいるんだろうか__。


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