年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
家に帰り着くと母が出迎えに来た。
私と郁の顔を見ると母は、話がある…と言い出し、早く上がって…と急かせながら、もう一度私のことを見直す。


「あら、望美」


何だか出かける前とヘアスタイルが違わない?と言う母の言葉に身を竦ませ、うんあの…と答え、自分の後ろに立つ輝を振り返った。


「どうも。初めまして」


ドアの隙間から現れた男性に気づいたらしい母が目線を上げ、一瞬だけを息を飲むのを感じた。
彼は私の隣に立つとはにかんだ笑みを浮かべ、私は掌を彼に向けて、「筒井輝さんです」と紹介した。



「あっ……ああ、はい…」


余りの美形ぶりに驚いたらしい母は、ポカンとしていた自分を直ぐに取り繕い、「初めまして。こんばんは」と頭を下げる。それから、いきなりどうしたの!?と訴える様な目線を私に向け、こっちは小さく微笑んだ。


「あのね、輝がお父さん達に話があるんだって」


私がそう言うと先に靴を脱いで上がっていた郁が振り返り、ピューと口笛を吹き鳴らす。

母はそれを聞いて郁に振り向き、眉間に皺を寄せながら、こらっと呟いて、こっちに向き直った。


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