年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
「だから、望美達は自分達の部屋を見繕ってきて。一人で住むのが不安なら、二人で一緒に住んでもいいと思うけど」

「えっ!?姉ちゃんと一緒!?」


郁は露骨に嫌そうな態度を示し、私はそれと同類のことを思いながらも、まだ頭が切り替わらずに沈黙した。


(私…どうすれば……)


頭の中で一瞬だけ輝のことが過ぎり、彼を頼るわけにもいかないと思って首を振る。
黙ったままでいる私を見兼ねたらしい母は、「望美」と声をかけながら顔を覗き込んできて__。


「今直ぐ家を出るんじゃないのよ」


再び同じ言葉を言って窺う。

その声に顔を上げて、うん…と頷いたものの、私はこれから先のことを考えるとまた悩みが増えてしまい、益々どうすればいいのかわからずに戸惑った。



(輝に相談を……ううん、駄目よ)


部屋に戻った後で、一人悩みながら頭を痛ませる。

郁は切り替えも早くて、暫くは会社の寮にでも住もうかな…と言っていたし、行き先が決まらないのは私だけのようだが……。


(これを機に結婚を…なんて、そんなの提案出来る自分でもない…)


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