元ストーカーの夫は、
つい最近、自分の驕った考えで後悔したばかりなのに──。
また、繰り返すところだった。
「なっちゃん?」
「あ……ううん、ゴメンね、遥。私、今日……変な態度ばっかりとってた。うん。本当、ゴメン。私もお風呂入ってくるね」
「え、あ……ちょっ、なっちゃん?」
何故か慌てだした遥を尻目に、エプロンを外してダイニングの椅子に無造作に掛け、お風呂場へと向かう。
すると、拭いている途中のお皿を持ちながら、後ろから遥が慌てて追いかけて来た。
「え、え、なっちゃん、お風呂行くの?」
「……?え、うん?」
「え、えーっと、俺、これ拭き終わったら、仕事持ち帰ってるから、仕事しようと思うんだけど……」
「あ、うん?そうなんだ、頑張ってね。無理しないようにね」
「……あ、あー……うん……ありがとう」
先程までの遥とは違い、何故だか私の返事にしょんぼりしながらキッチンへと戻って行く。
その後ろ姿を見て不思議に思いつつも、私もお風呂に入って気分を切り替えよう、とお風呂場へと向かった。
***
お風呂から上がってサッパリしたところでリビングに戻ると、遥がパソコンで仕事をしている後ろ姿がソファ越しに見えた。
遥が家にまで仕事を持ち込むのは本当に珍しい。
でも、それだけ今は忙しいって事なんだろうな、と仕事の邪魔にならないようにこっそりキッチンで飲み物を飲んで、遥に声を掛けずに寝室へと向かった。
だけど寝室のドアを開けてすぐに、なんともいえない寂しさが一気に押し寄せてくる。
真っ暗な部屋と、いつもより広く見えるベッド。
いつもは遥が先にベッドに入っていて、「なっちゃん、おいで」なんて言いながら、毛布を捲ってくれる。
でも………今日は───。
遥がこの部屋にいないだけで、こんなにも違って見えてしまう。
別にケンカをしたというわけでもないのに、目の淵にじんわりと涙が滲んで来る。
一瞬、遥のいるリビングに戻ろうかと迷った。
だけどさすがに寂しいからと戻るのは気が引けて、一歩、寝室の中へと進もうとすると───、
───グイッと、後ろへと手首を引っ張られた。