元ストーカーの夫は、
「───え、わっ……!」
急に手首を後ろに引っ張られた事で体勢を崩してしまい、よろけて後ろに倒れそうになったところをぎゅっとそのまま抱きしめられた。
ふわりと私と同じシャンプーの香りが鼻をくすぐる。
「え、えっ!?……遥っ!?」
驚いて声を掛けると、後ろから私の肩口に顔を埋めるようにして抱きついていた遥が、私の声に反応するように少し腕の力を強めた。
「……ゴメン。やり過ぎた」
「……え?」
ぼそりと呻き声のような声が聞こえて振り向こうとすると、更にぎゅうっと強く抱きしめられる。
「───もう無理。限界。参った。降参。なっちゃんが不足し過ぎて……俺もう死にそう」
遥はそう言うが早いか、私の両膝の裏に腕を回しふわりと身体を横抱きに抱き上げた。
急に身体が浮く感覚に驚いて声を出せずにいると、遥は長い脚を二、三歩動かして寝室に入り、私をそっとベッドの上へと降ろす。
すると廊下の灯りが暗い部屋の中を薄っすらと照らしてくれているせいか、上から覆いかぶさるように私を見つめる遥の泣きそうな表情が見えた。
「なっちゃんは何を勘違いしているのか知らないけど、……俺はなっちゃんが居なくちゃ生きていけないから。自分でもヤバイだろって思うくらいなっちゃんが好き過ぎて、本当はもっと四六時中くっ付いていたいし、本音を言うと誰にも見せたくないし閉じ込めたいくらいだけど。……でも、嫌われたくはないから我慢してる」
一気にまくし立てるように本音を漏らした遥は、少し気まずげに私から視線を逸らした。
「……え、じゃあ、さっきの余裕のある態度や言葉は……」
私の言葉に遥は更に気まずげに、少しだけ唇を尖らせているように見えた。