元ストーカーの夫は、

「……ゴメン。一回くらいなっちゃんから俺を求めてくれるんじゃないかって、勝手に期待して……でもなっちゃんは、相手の気持ちを思いやれる優しい子だって事を失念してた。自分の浮かれた気持ちでなっちゃんを傷付けていたら本末転倒だよね。本当ゴメン」


途端に、遥がしょんぼりと項垂れてしまった。
その様子がなんだか不謹慎にも可愛くて見えて、思わずふと口元が緩んで遥の頬にそっと手を伸ばす。


心の底から──……愛しいなぁって思う。


遥のストレートな想いで、自分の心がじんわりと満たされていく。
私もその想いを返したくて、遥をジッと見つめ返した。
すると私の伸ばした手を遥がギュッと握って、私の手のひらにそっと頬ずりをする。その仕草に妙にドキドキさせられていると、そのまま目を細めて上からじっと遥が見下ろしてきた。


「……なっちゃんに関しては、いつだって俺に余裕なんてないよ」


遥の視線と言葉にドキリと胸が高鳴るのと同時になんともいえない切なさを感じて、私は遥の首の後ろへとグッと手を伸ばして彼を抱きしめた。


「……私の方こそ、ゴメン。本当は、いつもみたいに遥が触れてきてくれなかった事がショックだったし寂しかったの。でも、あんな事言ってしまった手前、中々素直に言い出せなくて……ゴメン」


遥にちゃんと自分の気持ちを伝えようって決めたばかりだったのに。
不甲斐ない自分のせいで、また遥に不安な思いをさせてしまったと後悔が募る。

だけど素直な気持ちを口に出来たのは良いけれどやっぱり無性に恥ずかしくて、それを誤魔化すように更に強く遥に抱きついた。

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