元ストーカーの夫は、
すると遥がそれに応えるように一度私を強く抱きしめ返すと、そのままベッドへとまた押し倒されて唇を塞がれた。


……深く───深く。

正に貪るという表現がピッタリなくらい、何度も角度を変えて遥が舌を絡めてくる。
私はそれに溺れそうになりながらも、私自身も遥に触れたかった衝動で更に深く繋がれるようにと彼を強く抱きしめた。


「……はぁ。もう無理。素直ななっちゃん可愛すぎる。こんなんじゃ俺、明日からちゃんと我慢できるか自信無い」

「……我慢?」

「うん。なっちゃんが言ってた公共の場で、ってやつ……」


ああ、と今朝の遥を思い出して、つい笑みが溢れた。
すると遥が少しだけムッとしながら、私の鎖骨の辺りに強く吸い付いて紅い花を散らせていく。


「やっ、ちょ、遥……!見えるところはダメって、」

「公共の場でなっちゃんに触れないんだったら、見えるところに俺の印を付けとかなきゃ絶対嫌だ」

「はぁ!?ちょ、何それ、やだっ、遥っ!ちょっと待っ……もうっ、分かった……!分かったから!!」


私の叫びに遥の動きがピタリと止まる。
何故かジッと上から無表情で見つめてきたので、思わずパチパチと瞬きを繰り返してしまった。


「え、何……どうしたの遥……?」

「なっちゃんをこのまま襲いたいけど、言葉の続きを聞くまで我慢してるところ」

「え……我慢……?」


我慢というフレーズと今の彼の無表情で、今朝からの遥の様子を思い出して───ストン、と一気に腑に落ちた。

───ああ、そうか。

遥が無表情な時は、我慢している時なんだ。
瞬時に以前冬香さんから聞いた、遥の表情が乏しかった頃の話しを思い出した。
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