【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
……?
どうして、そんな顔してるの、かな……?
「あ、あの……?」
「……っ」
顔色を伺うように見つめると、和泉くんはハッとしたように目を見開いてから、視線を下げる。
そして、私に背を向けた。
「別に、そんなことないです」
和泉くんの言葉に、私の心配が杞憂だったことを知る。
「あ……ごめん、なさい……」
私の謝罪が聞こえたかどうかは、わからない。和泉くんは、スタスタと運動場の方へと歩いて行ってしまった。
はぁ……。
ひとりになった私は、大きな溜息を吐き出した。
勘違いだったなら、とんだ迷惑だっただろうな……。
余計な心配をして、意味のわからないことを言って、また嫌われてしまったかもしれない。