【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
優しい人だから?
……違う。
きっと他の人が同じ状況になっても、悪いことをしてしまったなぁとしか思わない。
じゃあ……どうしてこんなにも静香さんのこと……。
結局何もわからないまま、不甲斐のない自分を憎んだ。
粗方の仕事を終わらせ、食堂に向かう。
殆どの部員はもう食べ終わった頃だと思い向かったが、俺は異変に気付いた。
「おい柴原!!」
食堂に向かっている最中。
食堂から出てきただろう部員に声をかけられる。
「今日の晩飯不味すぎ!!あんなん食えないって!!」
……え?
「どういうこと?」
「いや、こっちが聞きてーよ!あんなのカレーじゃねーって!先輩たちも怒ってんぞ!!」
まさか……。
嫌な予感がして、食堂へ急ぐ。
中に入ると、不機嫌そうなマネージャーと、凄い形相で食事をしている部員の姿があった。
ていうか、なんだこの臭いっ……。
よく見ると、マネージャーたちがよそっているのはカレー……に見えるもの。
けれど、香りは全くそれとは違っていて、食欲をそそるどころか、食べて大丈夫なのかと思うような出来栄えだった。